滲出性中耳炎
滲出性中耳炎について
急性中耳炎で浸出液が中耳にたまった状態が続いて発症するケースが多くなっています。
中耳の炎症が長引いて、中耳を換気して適度な湿度を保つ耳管の機能が低下すると浸出液の排出がスムーズに行われなくなって滲出性中耳炎の発症リスクが上がります。
発症が多い年齢は3~10歳で、アデノイドが大きいと発症しやすい傾向があります。急性中耳炎と違い痛みなどの強い症状が少ないのですが、放置していると難聴を起こす可能性があります。
様子を観察して疑わしい場合にはできるだけ早く耳鼻咽喉科を受診して、治りきるまでしっかり治療を続けましょう。
よくある症状
- 耳が聞こえにくい
- 耳が詰まるような感覚
- 耳の奥に水がたまっているような感覚
就学前の子どもの症状
就学前に以下の様子が見られるお子様は、一度耳鼻科へご相談ください。
- 呼んでも返事がない
- テレビの音量を上げる
- 音への反応が鈍い
- 大きな声で話をしている
- よく聞き返すようになった
- 片方の耳を向けて話を聞く姿勢をとる
滲出性中耳炎の治療
炎症を鎮めるために消炎剤や抗ヒスタミン薬などによる薬物療法を行います。進行して難聴や鼓膜の癒着がある場合には、通気治療によって中耳にたまった浸出液を排出させます。
改善されない場合には、鼓膜切開術や鼓膜チューブ挿入術などによってスムーズな排出や換気ができるようにします。
◆鼓膜切開術
鼓膜を切開して浸出液を排出させます。切開された鼓膜は数日から1週間で自然に閉じます。
◆鼓膜チューブ挿入術
鼓膜切開術で改善しない場合や、繰り返し滲出性中耳炎を起こすケースで行う治療法です。切開した鼓膜に小さなチューブを留置して浸出液を長期的に排出できるようにします。
中耳の換気も促進される効果的な治療法です。このチューブは数ヶ月から数年間そのままにしておき、必要がなくなったら取り去ります。
取り去ったら鼓膜の穴は自然に閉じます。滲出液が中耳にたまらなくなるため、通院頻度を減らすことができますし、服用する薬も減らせます。また、聞こえの改善にも効果的です。
チューブを留置しているため違和感や浸出液の排出による耳だれなどが起こることがあります。違和感はほとんどの場合、数日で気にならなくなります。
なお、中耳につながるチューブを留置しているため、耳に水が入らないように十分注意する必要があります。
シャワー程度でしたらそれほど心配ありませんが、入浴やプールなどでは耳栓の装着が必要です。その際も事前に耳栓の装着方法などに関して、しっかり指導を受けてから行うようにしてください。
また潜水は厳禁です。
なお、留置したチューブが自然に脱落することがありますが、その場合は早めに受診してください。治療継続が必要な状態な場合には、再発させないために再度の留置が必要です。
鼓膜チューブ留置術の適応
急性中耳炎や滲出性中耳炎が進行して耳管が詰まると鼓膜内の気圧が低下して、浸出液や膿がスムーズに排出されなくなります。
それによって液体が中耳にたまると耳が詰まったような感じや、鼓膜のへこみによって聞こえの悪化が起こります。
鼓膜切開によって液体をスムーズに排出させることで治る場合もありますが、鼓膜の穴は数日から1週間程度でほとんどが自然に閉じてしまうため、再び内耳に液体がたまって再発を繰り返すことがあります。
そうした場合に、細いチューブを鼓膜の穴に留置して、排出や換気を長期間促進させるのが鼓膜チューブ留置術です。
鼓膜切開を行っても急性中耳炎や滲出性中耳炎を繰り返す場合は、鼓膜チューブ留置術が適応とみなされます。
鼓膜チューブ留置術の流れ
1. 局所麻酔
局所麻酔で行うことができ、手術時間も2~5分と短時間ですから、日帰り手術として受けられます。局所麻酔は鼓膜に行います。
2. 鼓膜切開
局所麻酔後に、留置するシリコンチューブと同じ直径の切開を鼓膜に行います。
3. シリコンチューブ挿入・留置
鼓膜を切開した場所にシリコンチューブを挿入します。シリコンチューブは両端に鍔があって抜けにくくなっています。チューブが中空で中耳の換気が可能になり、症状の改善を促進させる環境を保ちます。
4. 手術終了
シリコンチューブを留置させる期間は状態によって変わります。聞こえには問題はありません。
ただし、留置中は耳に水が入らないようにご注意ください。シャワー程度であればそのまま可能ですが、入浴やプールには耳栓の正しい装着が必要になります。
また耳栓をしている場合も潜水は厳禁です。耳栓の指導も当院では丁寧に行っています。
なお、必要なくなったチューブは簡単に取り除くことができます。チューブが通っていた穴は数日で自然に閉じますが、まれに閉じないこともあります。
その場合には、鼓膜穿孔閉鎖手術によって簡単に閉じることができます。