のどの病気 よくある症状・疾患THROAT DISEASE
よくある症状
◆喉の痛み
かぜ、インフルエンザ、咽頭炎、扁桃炎、扁桃周囲膿瘍、喉頭炎、急性喉頭蓋炎などにより喉の粘膜が炎症を起こすと、神経が刺激されて痛みを起こします。扁桃炎や扁桃周囲膿瘍は飲み込む際に強い痛みを起こすことが多く、急性喉頭蓋炎は呼吸困難を起こす可能性があります。喉の炎症は日常的に起こる症状ですが、呼吸がしにくい、息苦しいといった症状があったら速やかに医療機関を受診してください。
◆喉の違和感・異物感
異物感や飲み込みにくさ、喉が詰まるような感じといった違和感は、咽頭・扁桃・喉頭の炎症や、逆流性食道炎といった食道疾患によって起こります。
まれに喉頭がん、咽頭がん、食道がんの初期症状として喉の違和感が現れることもあります。こうしたがんは初期症状に乏しく、喉の違和感をきっかけで発見できた場合早期治療が可能になることが多くなっています。違和感や異物感があったら、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。耳鼻咽喉科では粘膜を直接観察する検査が可能ですから、早期発見につながります。
また粘膜に異常がなく起こる咽喉頭異常感症でも喉の違和感や異物感が起こることがあります。咽喉頭異常感症は心身症の症状として現れており、早期治療によって悪化させずに治すことができます。喉に違和感や異物感があったらお気軽にご相談ください。
◆声枯れ
声枯れは、声の使い過ぎの他に、かぜや喉頭炎などでも起こります。かぜなど感染症によって起こっている場合は、他の症状とともに声枯れも改善に向かいます。注意が必要なのは、症状がなかなか改善しない声枯れです。原因に声帯ポリープ、声帯結節、喉頭がん、下咽頭がん、反回神経麻痺、逆流性食道炎、食道がんなどが隠れている可能性があります。声枯れの症状が数日安静を保っても十分に改善しないようでしたら、他の症状がなくても耳鼻咽喉科を受診してください。
◆咳・痰
かぜや急性喉頭炎・急性気管支炎が原因になって起こる咳は、1~2週間程度で改善します。それ以上咳が続く場合には、咳喘息、慢性気管支炎、喉頭アレルギー、肺結核、肺がんなどの呼吸器疾患、血圧の薬の副作用、逆流性食道炎が疑われます。
痰は呼吸器である気管などの粘膜を保護する分泌液のかたまりです。喉や気管支の疾患で痰が増えるというケースが多いのですが、痰も2週間以上続く場合には深刻な病気の可能性があるため受診が必要です。
◆痰に血が混じる
気管や肺などの呼吸器からの出血以外に、鼻、口内粘膜、喉、食道などからの出血が痰に混じることがあります。出血しているのが鼻・口・喉であれば耳鼻咽喉科の検査でわかりますので、状態をご説明して適切な治療を行います。なお、鼻・口・喉に異常がない場合には呼吸器科や消化器科をご紹介して、スムーズに検査を受けていただけるようにしています。
◆飲み込みにくい・飲み込めない
飲食物は、口から飲み込まれて喉を通過し、食道を経て胃に届きます。この通り道が炎症などで腫れている、狭窄を起こしている、飲み込む筋肉が加齢などで衰えるなどによって飲み込みにくい症状が現れます。咽頭がんや食道がんでも飲み込みにくさという症状が現れることがあります。
喉には飲食物が通る食道と空気が通る気管に分かれる喉頭という部分があります。飲み込みがうまくできずむせるのは、この口頭で食道に入るべき飲食物が気管に入ってしまって起こっています。飲食物が誤って気管に入ることは誤嚥(ごえん)と呼ばれ、飲食物に付着していた菌によって肺炎を起こすことがよくあります。特に高齢者では誤嚥性肺炎を起こすことが多いため、よくむせる、飲み込みにくいといった症状がある場合にはご相談ください。
◆いびき
いびきは主に睡眠中に弛緩した筋肉が垂れ下がって狭くなった喉が呼吸によって振動して起こっています。副鼻腔炎などによる慢性的な鼻詰まり、肥満、アルコール摂取はいびきを起こしやすくします。また、顎の位置により舌が喉の方に落ち込んでいびきをかきやすくなるケースもあります。喉が極端に狭くなると無呼吸を起こすことがあります。睡眠中に何度も無呼吸の状態になるのが、睡眠時無呼吸症候群です。無呼吸のたびに睡眠が中断されるため慢性的に深刻な睡眠不足となり、酸素不足による集中力低下やさまざまな疾患リスクが上昇します。現在は睡眠時無呼吸症候群の効果的な治療法が登場しており、比較的簡単に良質な睡眠を取り戻せます。いびきを指摘された、十分な睡眠をとっても眠い、昼間抵抗できない強い睡魔に襲われるなどの症状がありましたら、早めにご相談ください。
喉の病気
◆上気道炎
上気道は鼻から喉にかけての部分で、ここに起こる急性の炎症が上気道炎です。主にかぜのウイルス感染によって起こり、のちに細菌感染を合併することもよくあります。最初から細菌に感染して起こることもあります。発症した場所によって、急性咽頭炎(咽頭粘膜やリンパ組織)、急性喉頭炎(喉頭粘膜)などに分けられます。急性咽頭炎は2週間以内にほとんどが治りますが、急性喉頭炎は1ヶ月以上かかるケースもあって比較的治療期間が長くなることが多くなっています。
治療法は、細菌感染が疑われる場合には抗菌剤を使いますが、ウイルス感染の場合は抗菌剤の効果がないので炎症を抑える薬を処方します。ウイルス・細菌どちらの場合も、超音波で薬剤をとても細かい霧状にして吸い込むネブライザー療法が有効です。
◆扁桃炎
口の奥にある口蓋垂(のどちんこ)の左右には、口蓋扁桃があります。この口蓋扁桃が細菌やウイルスに感染して急性の炎症を起こしているのが扁桃炎です。高熱と激しい喉の痛みが特徴であり、喉を観察すると口蓋垂の左右が赤く腫れています。頭痛や関節痛、寒気、倦怠感などを起こすこともあります。複数回の扁桃炎を1年間に起こした場合には、慢性扁桃炎と診断されます。
診察では問診と口蓋垂の左右が赤く腫れているかを確認し、血液検査で白血球数や炎症の程度、尿検査で脱水の有無を確認します。細菌感染の可能性が高い場合には適切な抗菌剤を調べるために細菌培養検査を行います。
ウイルス感染の場合には、解熱剤、消炎鎮痛剤などを用いて症状を緩和させる治療を行います。うがいも症状緩和に役立ちますし、脱水を避けるために十分な水分補給も重要です。安静を保つことでほとんどは1週間程度で治ります。
◆扁桃周囲膿瘍
口蓋垂(のどちんこ)の左右にある口蓋扁桃の急性扁桃炎が周囲に広がって進行し、膿のかたまりである膿瘍ができた状態です。若い男性に多く、はじめに喉の腫れ・痛み・発熱が起こります。進行すると口の開閉がしにくくなって、会話や食事に支障が出てきます。口臭や喉の片方だけが強く痛むといった症状を起こすこともあります。
診察では問診、喉の観察、血液検査を行い、炎症の程度を確認します。主に抗菌剤による治療を行いますが、十分な効果を得られない場合や腫れが大きい場合には、膿瘍の穿刺や切開により排膿を行います。排膿によって痛みは速やかに治まります。
◆咽頭炎
咽頭炎は細菌・ウイルスによる感染症以外にも刺激性のガス・粉塵・高温の気体の吸入、喫煙、大声など、さまざまな原因によって起こることがあります。
主な症状に、喉の違和感・むずがゆさ・痛み、声枯れ、咳、痰などがあり、息苦しさや呼吸しにくい症状を起こすこともあります。急性喉頭蓋炎を合併すると呼吸困難を起こすこともありますので、呼吸に問題がある場合はすぐに受診してください。
問診や喉の観察に加え、咽喉頭の粘膜を喉頭鏡で確認して炎症範囲や程度、気道狭窄の有無を調べ、症状や患部の状態に合わせた治療を行います。なお、気道狭窄を起こしている場合には、気管切開などの緊急な外科処置が必要になる可能性もあります。
◆耳下腺炎・顎下腺炎
耳の前から顎の下の部分に起こる炎症です。耳下腺炎では耳の前から下にかけての部分に痛みが起こり、顎下腺炎では顎の下の部分に痛みが起こります。ウイルスや細菌の感染によって起こり、代表的な病気に流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)があります。耳下腺炎と顎下腺炎は唾液腺炎を合併することもよくあります。唾液腺炎は、唾液の抗菌作用、口腔粘膜保護作用、消化などの機能を低下させて口内環境を一気に悪化させる恐れがあります。また唾液が減ることで飲み込みにくさなど嚥下障害リスクも高くなります。
痛み以外の症状として高熱や寒気を起こすこともあります。問診、喉や耳の下、顎の下の部分の観察、血液検査による白血球数や炎症の状態の確認、超音波検査などを行い診断します。細菌が原因の場合は抗菌剤を処方しますが、ウイルスが原因の場合には抗菌剤の効果がないため、解熱剤など症状を緩和させる薬を処方して安静を保ちます。患部の冷却やうがいも症状緩和に役立ちます。
◆口内炎
口内やその周辺の粘膜に起こる炎症で、食べ物がしみる、触れると強く痛むなどの症状を起こします。多発したり炎症が悪化すると食事ができなくなることもあります。原因には、疲労やストレス、ビタミン不足、外傷、クローン病といった疾患などがあります。口内炎は、舌・頬の内側・唇の内側・歯肉などにできますが、場所や多発の有無、発症頻度、治りにくさも診断で重要になるため、問診で詳しくお話をうかがいます。その後、炎症部分を観察し、疾患が疑われる場合には血液検査なども行います。クローン病などの疾患が疑われる場合には、連携した専門の医療機関をご紹介しています。
一般的な口内炎の場合には、原因に合わせてステロイド薬や抗菌薬、ビタミン剤などを使った治療を行います。